マセマのキャンパス・ゼミ 線形代数で勉強したことをまとめる。言葉の定義で迷うことがあったら、適宜ここを参照しながら読む。
【定義】線形空間
集合の任意の元(要素) およびに対して以下の性質を満たすときに を実数 上の線形空間という。
- 和の定義:
- 和の結合法則:
- 和の交換法則:
- 和について零元の存在: となる元 が一意に定まる。
- 和について逆元の存在: となる元が一意に定まる。
- スカラー倍の定義:
- 積の分配法則:
- 積の分配法則:
- 積の結合法則:
【定義】線形結合
線形空間 の元について、多項式
を線形結合という。
【定義】線形独立と線形従属
線形空間 の元について、線形関係式
を考える。
自明な解 以外の解を持たないとき、 は線形独立という。
自明な解以外を持つとき、 は線形従属であるという。
【定義】基底
線形空間 の元の組 が次の性質を満たすときに の基底という。
(1) は線形独立である。
(2) の任意の元 は の線形結合で表せる。
例えば、3次元列ベクトル空間 およびその元である
を考える。
- 元の組 は上記(1), (2)をともに満たすので基底となる。
- 元の組 は線形独立ではなく()、(1)を満たさないので基底とならない。
- 元の組 のみでは(2)満たさないので基底とならない。
【定義】次元
線形空間 の基底を構成する元の個数を、その線形空間 の次元といい、
と表す。
【定義】部分空間
線形空間の部分集合 が であり、 が線形空間であるとき、 を の部分空間という。
部分空間となる条件
集合を線形空間 の部分集合とし、、とする。
集合 はの部分空間、つまりが線形空間である必要十分条件は
である。
(i) は線形空間 の証明
十分条件は、先述の線形空間の条件(1), (6)つまり和、スカラー倍が集合内に存在することを示している。
なので、集合 の元の和、スカラー倍もまた集合 内の元であるとき、条件(2), (3), (7), (8), (9), (10)は満たす。
条件(4) 零元の存在に関しては、線形空間での が集合 内に存在すればよい。
これは上記の式に を代入すれば得られるので、集合内に存在するといえる。
条件(5) 逆元の存在に関しては、同様にして線形空間 での が集合 内に存在すればよく、これは上記の式にを代入すれば得られる。
(ii)は線形空間の証明
逆に、集合が線形空間であれば、和、スカラー倍が定義されるので、上記を満たす。
【定義】線形写像
を上の線形空間とする。写像を考える。
任意の元、任意の実数について
となるとき、をからへの線形写像という。
線形写像の性質
を上の線形空間とし、線形写像を考える。
はの部分空間である。
、とする。
は線形空間なので、が線形空間であること、つまり
を示す。
このとき
となるが存在する。
は線形空間なので、
であり、また、
である。
これを用いて
と変形できる。
ここで式(*)より
が導ける。
【定義】核
線形写像について。線形空間における零元をとする。このとき
と定義し、をのによる核という。
つまり、写像によって零元に変換されるの集合である。
核の性質
線形写像について。はの部分空間である。
核の定義より、はの部分集合なので、が線形空間であることを示せばよい。
そのために任意の元、任意の数について
となることを示す。
は線形写像なので、
となる。ただし、は線形空間における零元とする。
は線形空間の元なので、
がいえる。
(**), (***)より(*)が示せた。
【定義】全射
集合、写像について。
のとき、写像は全射であるという。
つまり、集合の任意の元について、対応する集合中の元が存在するということである。
このときは一意でなくてよい。
例としてを考える。
任意のについて、対応するが存在する。
ただし、それは複数個あり、全射であって単射ではない。
【定義】単射
集合、写像について。
任意の元について、
が成り立つとき、写像は単射であるという。
つまり、集合の任意の元に対応する集合中の元がそれぞれ別の値になっているということである。
このときでもよい。
例としてを考える。
任意のについて対応するが存在し、それらはすべて違う値である。
ただし、であり、写像は単射ではあるが全射ではない。
単射の証明の場合は、対偶である
を考えると良い。
全単射、同型写像
写像が全単射(全射かつ単射)であるとき、を同型写像という。
また、とは同型であるという。