マセマ キャンパス・ゼミ 線形代数線形空間と写像

マセマのキャンパス・ゼミ 線形代数で勉強したことをまとめる。言葉の定義で迷うことがあったら、適宜ここを参照しながら読む。

【定義】線形空間

集合Vの任意の元(要素)a,b,c およびλ,μRに対して以下の性質を満たすときにV を実数R 上の線形空間という。

  1. 和の定義:a+bV
  2. 和の結合法則:(a+b)+c=a+(b+c)
  3. 和の交換法則:a+b=b+a
  4. 和について零元の存在:a+0=0+a=a となる元0 が一意に定まる。
  5. 和について逆元の存在:a+x=x+a=0 となる元xが一意に定まる。
  6. スカラー倍の定義:λaV
  7.  1a=a
  8. 積の分配法則:λ(a+b)=λa+λb)
  9. 積の分配法則:(λ+μ)a=λa+μa
  10. 積の結合法則:(λμ)a=λ(μa)

【定義】線形結合

線形空間V の元a1,a2,,anについて、多項式 i=1nciai (c1,c2,cnR) を線形結合という。

【定義】線形独立と線形従属

線形空間V の元a1,a2,,anについて、線形関係式 i=1nciai=0 (c1,c2,cnR) を考える。
自明な解c1=c2==cn=0 以外の解を持たないとき、a1,a2,,an は線形独立という。
自明な解以外を持つとき、a1,a2,,an は線形従属であるという。

【定義】基底

線形空間V の元の組{a1,a2,,an} が次の性質を満たすときにV の基底という。
(1) a1,a2,,an は線形独立である。
(2) V の任意の元xa1,a2,,an の線形結合で表せる。

例えば、3次元列ベクトル空間R3 およびその元である a1=[100],a2=[010],a3=[001],a4=[110] を考える。

【定義】次元

線形空間V の基底を構成する元の個数を、その線形空間V の次元といい、 dimV と表す。

【定義】部分空間

線形空間Vの部分集合 WW であり、W が線形空間であるとき、WV の部分空間という。

部分空間となる条件

集合Wを線形空間V の部分集合とし、a1,a2Wλ,μRとする。 集合WVの部分空間、つまりWが線形空間である必要十分条件は  λa1+μa2W である。

(i) λa1+μa2WWは線形空間 の証明

十分条件は、先述の線形空間の条件(1), (6)つまり和、スカラー倍が集合W内に存在することを示している。

WV なので、集合W の元の和、スカラー倍もまた集合W 内の元であるとき、条件(2), (3), (7), (8), (9), (10)は満たす。

条件(4) 零元0の存在に関しては、線形空間Vでの0 が集合W 内に存在すればよい。 これは上記の式にλ=μ=0 を代入すれば得られるので、集合W内に存在するといえる。

条件(5) 逆元a1の存在に関しては、同様にして線形空間V でのa1 が集合W 内に存在すればよく、これは上記の式にλ=1,μ=0を代入すれば得られる。

(ii)Wは線形空間λa1+μa2Wの証明

逆に、集合Wが線形空間であれば、和、スカラー倍が定義されるので、上記を満たす。

【定義】線形写像

V,VR上の線形空間とする。写像f:VVを考える。
任意の元a1,a2V、任意の実数λ,μRについて f(λa1+μa2)=λf(a1)+μf(a2) となるとき、fVからVへの線形写像という。

線形写像の性質

V,VR上の線形空間とし、線形写像f:VVを考える。
Imf=f(V)Vの部分空間である。

x1,x2Vλ,μRとする。

Vは線形空間なので、Imfが線形空間であること、つまり  λx1+μx2Imf を示す。

このとき {x1=f(x1)x2=f(x2) となるx1,x2Vが存在する。

Vは線形空間なので、 (*)λx1+μx2V であり、また、 λf(x1)+μf(x2)=f(λx1+μx2) である。

これを用いて λx1+μx2=λf(x1)+μf(x2)=f(λx1+μx2) と変形できる。

ここで式(*)より f(λx1+μx2)Imf が導ける。

【定義】核

線形写像f:VVについて。線形空間Vにおける零元を0とする。このとき Kerf={xV|f(x)=0} と定義し、KerfVfによる核という。

つまり、写像fによって零元に変換されるx (xV)の集合である。

核の性質

線形写像f:VVについて。KerfVの部分空間である。

核の定義より、KerfVの部分集合なので、Kerfが線形空間であることを示せばよい。

そのために任意の元x1,x2Kerf、任意の数λ,μについて (*)λx1+μx2Kerf となることを示す。

fは線形写像なので、 f(λx1+μx2)=λf(x1)+μf(x2)=λ0+μ0(**)=0 となる。ただし、0は線形空間Vにおける零元とする。

x1,x2は線形空間Vの元なので、 (***)λx1+μx2V がいえる。

(**), (***)より(*)が示せた。

【定義】全射

集合X={x},Y={y}、写像f:XYについて。
Imf=Yのとき、写像fは全射であるという。

つまり、集合Yの任意の元yについて、対応する集合X中の元xが存在するということである。 このときxは一意でなくてよい。

例としてX={x|x(2n+1)π,xR,nZ},Y={y|yR},f(x)=tanxを考える。

任意のyについて、対応するxが存在する。 ただし、それは複数個あり、全射であって単射ではない。

【定義】単射

集合X={x},Y={y}、写像f:XYについて。
任意の元x1,x2Xについて、 x1x2f(x1)f(x2) が成り立つとき、写像fは単射であるという。

つまり、集合Xの任意の元xに対応する集合Y中の元yがそれぞれ別の値になっているということである。 このときImfYでもよい。

例としてX={x|xR},Y={y|yR},f(x)=tan1xを考える。

任意のxについて対応するxが存在し、それらはすべて違う値である。 ただし、Imf={y|π2<y<π2}Yであり、写像fは単射ではあるが全射ではない。

単射の証明の場合は、対偶である f(x1)=f(x2)x1=x2 を考えると良い。

全単射、同型写像

写像f:XYが全単射(全射かつ単射)であるとき、fを同型写像という。
また、XYは同型であるという。

2021年10月23日アップロード
最終更新日:2021年8月13日
最終更新日:2024年9月15日(ディレクトリ構成を変更)
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