マセマのキャンパス・ゼミ 線形代数で勉強したことをまとめる。言葉の定義で迷うことがあったら、適宜ここを参照しながら読む。
集合\( V \)の任意の元(要素)\( \boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}, \boldsymbol{c}\) および\( \lambda, \mu\in \mathbb{R}\)に対して以下の性質を満たすときに\( V \) を実数\( \mathbb{R}\) 上の線形空間という。
線形空間\( V \) の元\( \boldsymbol{a_1}, \boldsymbol{a_2}, …, \boldsymbol{a_n} \)について、多項式 \[ \displaystyle \displaystyle \sum_{i=1}^n c_i \boldsymbol{a_i} \ (c_1, c_2, … c_n \in \mathbb{R}) \] を線形結合という。
線形空間\( V \) の元\( \boldsymbol{a_1}, \boldsymbol{a_2}, …, \boldsymbol{a_n} \)について、線形関係式
\[ \displaystyle
\displaystyle \sum_{i=1}^n c_i \boldsymbol{a_i} = 0 \ (c_1, c_2, … c_n \in \mathbb{R})
\]
を考える。
自明な解\( c_1 = c_2 = … = c_n = 0 \) 以外の解を持たないとき、\( \boldsymbol{a_1}, \boldsymbol{a_2}, …, \boldsymbol{a_n} \) は線形独立という。
自明な解以外を持つとき、\( \boldsymbol{a_1}, \boldsymbol{a_2}, …, \boldsymbol{a_n} \) は線形従属であるという。
線形空間\( V \) の元の組\( \{ \boldsymbol{a_1}, \boldsymbol{a_2}, …, \boldsymbol{a_n} \} \) が次の性質を満たすときに\( V \) の基底という。
(1) \( \boldsymbol{a_1}, \boldsymbol{a_2}, …, \boldsymbol{a_n} \) は線形独立である。
(2) \( V \) の任意の元\( x \) は\( \boldsymbol{a_1}, \boldsymbol{a_2}, …, \boldsymbol{a_n} \) の線形結合で表せる。
例えば、3次元列ベクトル空間\( \mathbb{R}^3 \) およびその元である \[ \displaystyle \boldsymbol{a_1} = \begin{bmatrix} 1 \\ 0 \\ 0 \end{bmatrix}, \boldsymbol{a_2} = \begin{bmatrix} 0 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix}, \boldsymbol{a_3} = \begin{bmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{bmatrix}, \boldsymbol{a_4} = \begin{bmatrix} 1 \\ 1 \\ 0 \end{bmatrix} \] を考える。
線形空間\( V \) の基底を構成する元の個数を、その線形空間\( V \) の次元といい、 \[ \displaystyle \dim V \] と表す。
線形空間\( V \)の部分集合 \( W \) が\( W \neq \varnothing \) であり、\( W \) が線形空間であるとき、\( W \) を \( V \) の部分空間という。
集合\( W \)を線形空間\( V \) の部分集合とし、\( \boldsymbol{a_1}, \boldsymbol{a_2} \in W \)、\( \lambda, \mu \in \mathbb{R} \)とする。 集合\( W\) は\( V \)の部分空間、つまり\( W \)が線形空間である必要十分条件は \[ \displaystyle \lambda \boldsymbol{a_1} + \mu \boldsymbol{a_2} \in W \] である。
(i) \(\lambda \boldsymbol{a_1} + \mu \boldsymbol{a_2} \in W \implies W \)は線形空間 の証明
十分条件は、先述の線形空間の条件(1), (6)つまり和、スカラー倍が集合\(W\)内に存在することを示している。
\( W \in V \) なので、集合\( W \) の元の和、スカラー倍もまた集合\( W \) 内の元であるとき、条件(2), (3), (7), (8), (9), (10)は満たす。
条件(4) 零元\( \boldsymbol{0} \)の存在に関しては、線形空間\( V\)での\( \boldsymbol{0} \) が集合\( W \) 内に存在すればよい。 これは上記の式に\( \lambda = \mu = 0 \) を代入すれば得られるので、集合\( W \)内に存在するといえる。
条件(5) 逆元\(\boldsymbol{-a_1}\)の存在に関しては、同様にして線形空間\( V\) での\( \boldsymbol{-a_1} \) が集合\( W \) 内に存在すればよく、これは上記の式に\( \lambda = -1, \mu = 0 \)を代入すれば得られる。
(ii)\(W\)は線形空間\(\implies \lambda \boldsymbol{a_1} + \mu \boldsymbol{a_2} \in W\)の証明
逆に、集合\(W\)が線形空間であれば、和、スカラー倍が定義されるので、上記を満たす。
\( V, V'\)を\(\mathbb{R}\)上の線形空間とする。写像\(f : V \to V'\)を考える。
任意の元\(\boldsymbol{a_1, a_2} \in V\)、任意の実数\( \lambda, \mu \in \mathbb{R}\)について
\[ \displaystyle
f(\lambda\boldsymbol{a_1}+\mu\boldsymbol{a_2}) = \lambda f(\boldsymbol{a_1})+\mu f(\boldsymbol{a_2})
\]
となるとき、\( f\)を\(V\)から\(V'\)への線形写像という。
\( V, V'\)を\(\mathbb{R}\)上の線形空間とし、線形写像\(f : V \to V'\)を考える。
\( \mbox{Im}f = f(V) \)は\(V'\)の部分空間である。
\( \boldsymbol{{x_1}', {x_2}'} \in V' \)、\( \lambda, \mu \in \mathbb{R}\)とする。
\(V'\)は線形空間なので、\( \mbox{Im}f \)が線形空間であること、つまり \[ \displaystyle \lambda \boldsymbol{x_1'} + \mu \boldsymbol{x_2'} \in \mbox{Im}f \] を示す。
このとき \[ \displaystyle \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \boldsymbol{{x_1}'} = f(\boldsymbol{x_1}) \\ \boldsymbol{{x_2}'} = f(\boldsymbol{x_2}) \end{array} \right. \end{eqnarray} \] となる\(\boldsymbol{{x_1}, {x_2}} \in V \)が存在する。
\(V\)は線形空間なので、 \[ \displaystyle \lambda\boldsymbol{x_1} + \mu \boldsymbol{x_2} \in V \tag{*} \] であり、また、 \[ \displaystyle \lambda f(\boldsymbol{x_1}) + \mu f(\boldsymbol{x_2}) = f(\lambda {x_1} + \mu {x_2}) \] である。
これを用いて \[ \displaystyle \begin{eqnarray} \lambda\boldsymbol{x_1'} + \mu \boldsymbol{{x_2}'} &=& \lambda f(\boldsymbol{x_1}) + \mu f(\boldsymbol{x_2})\\ &=& f(\lambda \boldsymbol{x_1} + \mu \boldsymbol{x_2}) \end{eqnarray} \] と変形できる。
ここで式(*)より \[ \displaystyle f(\lambda \boldsymbol{x_1} + \mu \boldsymbol{x_2}) \in \mbox{Im}f \] が導ける。
線形写像\(f:V \rightarrow V'\)について。線形空間\(V'\)における零元を\(\boldsymbol{0'}\)とする。このとき \[\displaystyle \mbox{Ker}f = \{\boldsymbol{x} \in V | f(\boldsymbol{x})=\boldsymbol{0'} \} \] と定義し、\(\mbox{Ker}f\)を\(V\)の\(f\)による核という。
つまり、写像\(f\)によって零元に変換される\(\boldsymbol{x} \ (\boldsymbol{x}\in V) \)の集合である。
線形写像\(f:V \rightarrow V'\)について。\(\mbox{Ker}f\)は\(V\)の部分空間である。
核の定義より、\(\mbox{Ker}f\)は\(V\)の部分集合なので、\(\mbox{Ker}f\)が線形空間であることを示せばよい。
そのために任意の元\(\boldsymbol{x_1, x_2}\in\mbox{Ker}f\)、任意の数\(\lambda, \mu \)について \[\displaystyle \lambda\boldsymbol{x_1}+\mu\boldsymbol{x_2} \in \mbox{Ker}f\tag{*} \] となることを示す。
\(f\)は線形写像なので、 \[\displaystyle \begin{eqnarray} f(\lambda\boldsymbol{x_1}+\mu\boldsymbol{x_2}) &=& \lambda f(\boldsymbol{x_1}) + \mu f(\boldsymbol{x_2}) \\ &=& \lambda\boldsymbol{0'} + \mu\boldsymbol{0'} \\ &=& \boldsymbol{0'}\tag{**} \end{eqnarray} \] となる。ただし、\(\boldsymbol{0'}\)は線形空間\(V\)における零元とする。
\(\boldsymbol{x_1, x_2}\)は線形空間\(V\)の元なので、 \[ \displaystyle \lambda\boldsymbol{x_1}+\mu\boldsymbol{x_2} \in V \tag{***} \] がいえる。
(**), (***)より(*)が示せた。
集合\(X=\{\boldsymbol{x}\}, Y=\{\boldsymbol{y}\}\)、写像\(f:X\rightarrow Y\)について。
\(\mbox{Im}f=Y\)のとき、写像\(f\)は全射であるという。
つまり、集合\(Y\)の任意の元\(\boldsymbol{y}\)について、対応する集合\(X\)中の元\(\boldsymbol{x}\)が存在するということである。 このとき\(\boldsymbol{x}\)は一意でなくてよい。
例として\(X=\{x|x\neq(2n+1)\pi, x\in\mathbb{R}, n\in\mathbb{Z}\}, Y=\{y|y\in\mathbb{R}\}, f(x)=\tan{x}\)を考える。
任意の\(y\)について、対応する\(x\)が存在する。 ただし、それは複数個あり、全射であって単射ではない。
集合\(X=\{\boldsymbol{x}\}, Y=\{\boldsymbol{y}\}\)、写像\(f:X\rightarrow Y\)について。
任意の元\(\boldsymbol{x_1, x_2} \in X\)について、
\[\displaystyle
\boldsymbol{x_1}\neq \boldsymbol{x_2} \implies f(\boldsymbol{x_1}) \neq f(\boldsymbol{x_2})
\]
が成り立つとき、写像\(f\)は単射であるという。
つまり、集合\(X\)の任意の元\(\boldsymbol{x}\)に対応する集合\(Y\)中の元\(\boldsymbol{y}\)がそれぞれ別の値になっているということである。 このとき\(\mbox{Im}f\neq Y\)でもよい。
例として\(X=\{x|x\in\mathbb{R}\}, Y=\{y|y\in\mathbb{R}\}, f(x)=\tan^{-1}{x}\)を考える。
任意の\(x\)について対応する\(x\)が存在し、それらはすべて違う値である。 ただし、\(\mbox{Im}f=\{y|-\displaystyle\frac{\pi}{2}\lt y \lt \frac{\pi}{2}\} \subsetneqq Y \)であり、写像\(f\)は単射ではあるが全射ではない。
単射の証明の場合は、対偶である \[\displaystyle f(\boldsymbol{x_1}) = f(\boldsymbol{x_2}) \implies \boldsymbol{x_1}= \boldsymbol{x_2} \] を考えると良い。
写像\(f:X\rightarrow Y\)が全単射(全射かつ単射)であるとき、\(f\)を同型写像という。
また、\(X\)と\(Y\)は同型であるという。